フルスロットル

PRODUCTION NOTE

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 『フルスロットル』は、『アルティメット』(04)と『アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ』(09)をベースとして始まった。

 驚異的な“パルクール”のスタントと、そのカリスマであるダヴィッド・ベルが出演したことで、この2作品は他のアクション映画とは一線を画すものとなった。パルクールは、人間の肉体だけを用いて、街中のありとあらゆる障害を乗り越え、強い精神の獲得を目指す。リュック・ベッソンは、『アルティメット』と『アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ』の両作品で脚本と製作を担当、両作品は大成功を収めた。その英語リメイクの話が持ち上がった時、ベッソンはカミーユ・ドゥラマーレに連絡を取った。

 編集者としてキャリアをスタートさせたドゥラマーレが、『フルスロットル』で監督デビューを飾る。プロデューサーとしてベッソンに携わってもらうことは、初めて監督を務めるドゥラマーレを大きな安心へと導いた。

 「リュックとの仕事は喜びだった。彼を尊敬し、彼から多くを学んだよ。2日間で脚本を検討した時も、彼は書いていた時のビジョンと期待について話してくれた。彼とあれほど近くで仕事ができるなんて、この上ないチャンスだったよ。全体を通して彼は大きな支えだった。僕にとっては魔法の薬のようだったよ。撮影中も彼はそばにいて僕の質問に答え、問題を解決してくれた」

 ポール・ウォーカーは優秀な潜入捜査官ダミアンを演じている。撮影期間中、ウォーカーと、リノを演じたダヴィッド・ベルは互いから多くを学んだ。「ダヴィッドが南カリフォルニアで生まれていたら、彼と一緒にスケートやサーフィンをして成長しただろう。絶対彼をスケート広場で見かけたはずだ。彼は南カリフォルニア育ちの少年みたいな感じがする。のんびりしていて、クールな物腰だ。肩の力は抜けているが、仕事をすごく真剣に受け止め、自分に厳しい。そこを僕は立派だと思うし、共感する。それにこの映画のスタントで、彼は肉体を酷使した。彼のパルクールは見事だし、僕も負けないように自分ができることを頑張ったよ」

 ウォーカーは、撮影前と撮影中、半月板を損傷していた時でさえ、この映画のために訓練した。「治りが早かったから、ダヴィッドと映画全体で、もっと力強くて面白い映像にする方法を見つけようとした。素晴らしい協力関係だったよ」と彼は言う。「でも彼がすることを僕はできない。彼の能力は並外れているんだ。彼の仕事を見ながらそばにいられて光栄だったよ」

 「ダミアンには晴らすべき恨みがある。でもただ遊びたい自分もいるんだ。彼は女性と車が大好きな、クールな男なんだ。僕たちは、楽しむこと、悪い奴をぶちのめすのが好きなところが似ていると思う。それがこの映画に出たかった理由でもある。ビルから飛び降りたり、男の楽しみを満喫できる映画なんだ!」

オリジナル版と本作両方で、ダミアンの相棒リノを演じたのが“パルクール”のスター、ダヴィッド・ベルである。本作が初めての英語映画出演となるベルは新しい方法で同じ役を再演した。 本作に参加できることに胸躍らせたベルではあったが、最初は完全に準備できていなかったようだ。「たくさんの訓練が必要だったよ。しばらくパルクールはやっていなかったからね。もう十分だと思って静かな生活を送っていたんだ!だからリュック・ベッソンがこの映画のことで電話してきた時、僕は『体重を10キロ落として、英語を勉強して、振付を考えないといけない』と思った。でもその価値はあったよ」とベルは言う。

 ベルは、自分のほとんどのシーンとスタントを分かち合ったポール・ウォーカーが、自分の変身を容易にする手助けをしてくれたと言う。「ほかの映画では、自分がもっと制限された感じがした。でもポールは僕がリラックスし、解放できるように助けてくれたんだ。とてもいい雰囲気だったよ」

 本作でダミアンとリノ、共通の敵となる、麻薬王トレメインをマルチな才能をもつRZAが演じている。ウォーカーとベルの両方のファンだったRZAは、オリジナルの2本を観ていた。「ダヴィッドは独自のやり方を開拓した。パルクールを携えてフランスからやって来て、世界のステージに載せた。彼との共演で気に入ったことは、同じシーンでスタントが必要になっても、僕の前に立っているのは、まさにダヴィッド本人だったことだ。さすがだと思ったよ。僕たち全員が本当に溶け込んでいた」とRZAは言う。

 RZAは、演じるトレメイン役とは自身が正反対だとしても、彼が置かれた不幸な環境の中でリーダーとなった彼の行動の動機や、何が彼をそう追い立てているのか、自分にも理解できると感じた。「トレメインの、車や物にこだわる物質主義は僕とは違う。僕はそういうものに夢中にはならない。彼のように衝動的でも、クレイジーでも、暴力的でもない。でも彼について同意できるところは、自分のコミュニティでリーダーにならねばならないことだ」とRZAは説明する。「僕は“ウータン・クラン”のメンバーとして、自分の能力を尽くしてグループのリーダーを務めてきた。トレメインの場合、環境のせいで、彼は強制的にネガティブな人生を生きるように追いやられた。でも彼にも秘められたポジティブな感情がある。彼はそれを見つけようとしているんだ」

 さらに彼はドゥラマーレ監督の舞台演技になぞらえる演出アプローチを高く評価する。「ダミアンとリノが捕まって、トレメインのところに連れ戻されるシーンがある。脚本の5ページくらいのシークエンスを、何度も何度も撮影した。少しずつ撮影するやり方に慣れている僕にはとても難しい撮影だった。そのシーンはまるで目の前で観る舞台演技のようだったんだ。ずっとやらされて、エネルギーを大量に消費したよ。でも5~6回のテイクのあとで、僕たちの心に、マジックがおき始めたんだ。一瞬、僕はもう自分ではなくなって、この映画の世界にワープしたように感じた。思ってもみなかったよ。素晴らしい戦術だ」とRZAは言う。

 この3人は、それぞれがユニークなキャリアを持つ俳優であり、それぞれが自分のキャラクターに新鮮さをもたらした。

 「この映画を準備しながら、すぐに、これら3人の全く異なる俳優たちと仕事をするという難しさに気づいた。ポール・ウォーカーはハリウッド映画出身だ。ダヴィッド・ベルの背景はパルクールとスタントで、その上彼はフランス人だ。RZAは監督でもあり、有名な才能溢れるミュージシャンでラッパーでもある。彼らはそれぞれ固有のアプローチ法と作業方法をもっている。これらの異なる背景の持ち主たちを噛み合わせることが、最初は難しかった。特に、僕たちには多くの準備期間がなく、彼らも撮影初日の直前に会っただけだった。でも全員、この作品と相手に対して大きな愛情をもち、すぐに気が合った。映画のラストシーンを撮影した時はまだ主要な撮影が始まって1週目だったが、彼らには素晴らしい相性と、個性と魅力がすでに築かれていたんだ」とドゥラマーレ監督は言う。

 監督は、プリプロダクションの短い期間と撮影期間全体を通して、俳優たち全員と密に作業した。特に、リノとダミアンの関係は、ドゥラマーレ、ベル、そしてウォーカーのアイデア交換から発展した、相互の努力によって生まれたものである。

 「ダヴィッド・ベルはポールのように多くの映画経験がない。特に英語ではね。僕は彼と自分自身を元気付けねばならなかった。どちらにとっても長期間英語で仕事をするのは簡単ではなかったからだ。それに彼には肉体的な作業が必要だった。彼はスタント全てをこなすために完ぺきな身体にしなくてはならなかった。つまり彼には演技と肉体の両方の準備が必要だったんだ。ポールとはそれよりかなり遅く、撮影が始まる直前に会ったから、彼との作業はもっと短期間でもっと集中したものになった。僕たちはアイデアを交換し台詞を彼に合わせていった。僕は、俳優が台詞に満足していない限り、俳優に台詞を押し付けないことが大切だと思う。さもないと、自然に聞こえない。ダヴィッドとポールと一緒に作業し、僕たちは二人のフランス語と英語の障壁から生じるユーモアを発展させていった」とドゥラマーレ監督は言う。

 リアリティあるアクションとペースを保つために、俳優全員が自分のスタントを出来る限りこなした。

「俳優にカメラを向けて撮影し始めると、もっといいショットが見えてくる。すると、別のバージョンがもっといいかもしれないと思う自分自身を信頼する事が必要になるんだ。それは俳優も同じだ。彼らを抑制するのは良くない。テイクに対して彼らに提案や何かもっと加えたいことがあれば、それはいい驚きになる。常にそれがいいものをもたらす。編集する時に、もっと多くの選択肢を与えてくれるんだ」とドゥラマーレ監督は言う。

 『フルスロットル』はデトロイトとモントリオールで撮影された。ブリック・マンションとなる気骨溢れる都会の、ほとんど終末的な荒廃した場所を捉えるため、ドゥラマーレ監督は、新旧取り混ぜた様々なテクニックを用いた。

 観客がアクションの中心にいる感覚を達成するため、ドゥラマーレ監督は、カメラができるだけアクションの近くで撮影できるような手法を用いた。「カナダでは“無人空撮マシン”と呼ばれる空撮マルチコプター・ドローンのような、新しい装置を使用した。ヘリコプターでの撮影に似ているが、対象物により近づける。たとえば、追跡シーンを撮影中に、もっと近づいて追いかけたり、普通のヘリコプターでは入れない限定された空間にも入って行けるんだ」

 また、映画のスピードにもこだわり、アクションをほんの一瞬ストップさせることで、そのアクションを際立たせた。「この映画では頻繁にスローモーションを使おうとした。僕は瞬間を捉える一時の間が好きなんだ。そこでは音楽も止まり、スタントやパンチを超越する」

 ドゥラマーレ監督は『フルスロットル』に大きな期待を抱いている。それは単に監督としての一作目というだけでなく、本作がアクションジャンルに新たな解釈を加える作品になると信じているからである。

 「アクション映画を愛する人々にとって全てを提供する作品になった。カーチェイス、銃撃戦、サスペンス、ひねった展開、興奮はもちろんのこと、見応えあるパルクール、感情、そしてコメディ性。実際にアドレナリンを注射したかのように、このジャンルのファンたちを魅了するだろう」

 『フルスロットル』は、観客をコンクリートジャングルのど真ん中に落とし、囚われたローラを助け出し、巨大な陰謀に立ち向かうダミアンとリノのエネルギッシュで壮大な使命感を肌で体感させてくれる映画なのだ。